スクラムハーフ49号

◆テキスト版◆

 スクラムハーフ49号

 2021年11月13日発行

 目次(ページ数は墨字版のものです)

 1.前田蓮さん、インターン日誌!!・・・p3

 2.独占インタビュー♪施設の暮らしって?・・・p6

 3.2021年度第2回ヘルパー現任研修報告・・・p9

 4.編集後記・・・p12

1.表紙

(写真:7人の男女が並んでいます。一人一人の顔にかぼちゃの被り物が合成されています。上部にはハロウィンの文字とイラストがあります。が、一人だけかぼちゃをかぶっていない人がいます。)

 すっくんラムちゃんの吹き出し「トリックオアトリート!あれ一人だけへんしんしてない!?」

 上写真:スクラムのみんなで写真アプリを使って撮影!ひとりだけ顔認証してない(笑)

2.前田蓮さん、インターン日誌!!

 スクラムでは、8月から9月にかけて、初めて大学生の当事者にインターンを実施しました。

 インターンとは、就職活動の一環で、学生のうちに職場体験を通して働くことの楽しさやしんどさを経験して、自分の進路選択に活かすことを目的にしています。今回は四天王寺大学4回生の前田蓮さんにオンラインではありますがスクラムの活動や仕事を体験してもらいました。

 (イラスト:男の子がパソコンを使って仕事をしているイラスト)

 前田蓮さん、プロフィール

 四天王寺大学4回生。脳性まひで車いすを使用。大学では軽音サークルでボーカルをつとめる。

 小学校から地域の学校に通う。現在はヘルパーを使いながら実家で家族と暮らしている。

 インターンの内容としてはスクラムの事業説明、自立生活センターの特徴や目的を理解する、ピアカンやピア・サポートを実際に体験してみる、自分自身のこれまでを振り返って自分史を発表するなど、プログラムを立てました。また、当事者がどのようにして働いているのかイメージを持つことも目標にしました。 本来なら事務所に来てもらい、実際に職場を見学してほしかったのですが、コロナの感染拡大防止のため、それが叶わなかったことが残念です。オンラインでいろんな工夫をして事務所の雰囲気を感じられるようにしましたが伝わったかな?

 手探りでのインターンでしたが、無事に終わることができました。

 ここからは、蓮さんにインターン終了後の感想を聞いたので、インタビュー形式でお伝えしたいと思います!  蓮さん、よろしくお願いします!

 Q1.大学では何を勉強して、どんな風に生活をしていましたか?

 A1.主に心理学を勉強してきました。大学内では友達や学生のサポーターと一緒に過ごしていて、ヘルパーは学校の通学だけでした。

 Q2.大学で一番の楽しい思い出はどんなことですか?

 A2.軽音楽部の夏合宿で呑んでオールしてたのが一番の思い出かなーと思います。

 Q3.コロナ禍でのオンライン授業でしんどかったこと、よかったことは?

 A3.家にずっと居らなあかんかったんでしんどかったです。良かったことは、ごろごろしながら授業を受けれたことです。

 Q4.今までどんな就活をしましたか? また、就活で障害のために悔しい思いをしたことや不安だったことはありますか?

 A4.障害専門の企業説明会にいきました、参加して思ったことは、やはり軽度の障害者ばかりの雇用だったので、悔しかったです。自分でも就活やインターン可能なのか?と受け入れてくれるのか?等が不安でした。

 Q5.スクラムでインターン受けようと思ったきっかけは?

 A5.障害者が働いている現場を見たかったし、昔から良くしてもらっていたので、インターンを受けようと思いました。

 Q6.オンラインのインターンでよかったこと、難しかったことは?

 A6.良かったことは、スクラムがどのような所なのか?何をしているのか?がインターンを通してわかったことです。難しかったことは、オンラインだったので、直接な空気感が感じれなかったことです。

 Q7.スクラムでのインターンで一番印象に残っていることはなんですか?

 A7.インターンを通して相談支援であったり相談相手にあったサポートをしていたり、様々な分野で活動をしている事がわかりました。また、ピアカンでは、当事者同士で話し合うことによって共感できることや学ぶ事があったので、自分の気持ちも楽になったという印象がありました。働くにも色んな働き方があったので、それも勉強になりました。

 Q8.どんな女の子がタイプですか?

 A8.黒髪の女性ならショートでもロングでも好きです!! って、これインターンに関係ありますか!?

 今回、蓮さんのインターンやお話を通して、僕たちも学ぶことが多くありました。障害当事者は社会の様々な場面で理不尽な制限や差別と出会いますが、就職活動ではそれが非常に多いように感じます。障害があるという理由だけで入社試験を受けられなかったり、合理的配慮がなくて本来の自分の力が発揮できなかったり。まだまだ当事者が社会で仕事をすることのハードルは高いものがあると実感しました。そんな社会を少しでも変えていけるように、仲間を増やし僕たちの声をあげていけたらいいなと思います。また蓮さんがこのインターンを通してそのような障害者運動に少しでも興味を持ってくれたらいいなと思います。(酒井)

3.独占インタビュー♪ 施設の暮らしって?

 自分らしい生活って言うけど、それって、一人暮らしや自立生活をしてなきゃできないの? 施設の暮らしでも自分のやりたいことをして楽しく過ごしたいよー。

 そう思ってる人も多いはず。そこで今回は、施設で生活されている当事者、新城めぐみさんにインタビューしてみました! 意外と知らない、施設での生活を聞くことができました!

 (写真:エプロン姿で笑顔の新城さん。料理もおいしそう。)

 新城めぐみさん

 大阪市在住のナチュラルガール。ニックネームはめぐさん。脳性まひによる障害があります☆  昨年お母さんの入院をきっかけに急遽施設に入所。それまでは地域の作業所で古本を磨いたりパソコンのお仕事をしていたよ。今はコロナでずっと外出できず面会もままならないけど、自立を目標にがんばっているよ。かわいいもの、カラオケが大好き!

 インタビュアー:酒井、尾濱

 酒井「それでは新城さん、よろしくお願いします!」

 めぐ「よろしくお願いします」

 酒井「最初の質問です。施設では普段、どんなことをして過ごしていますか?」

 めぐ「えー、なにしてるかな。。。? ラジオ聞いたりしてます」

 尾濱「いいですね! どんなラジオ聞いてます?」

 めぐ「802とか、かな。あとテレビも見てる。めざましテレビが好きです。みんなで見てます」

 尾濱「みんなでほかにどんなことしてる?」

 めぐ「輪投げした! でも2個くらいしか入らなかった」

 酒井「ほかに楽しかったこと、ある?」

 めぐ「ごはんが美味しいです! 今日はうどんでした。朝はパンでした。ジャムパン、イチゴのやつ」

 尾濱「私たちはまだお昼食べてません!」

 めぐ「なに食べるんですか?」

 尾濱「酒井さんがスイーツ買ってくれるって言うから、さつまいものスイーツ食べたい!」

 めぐ「酒井さんマクドナルド買って!(笑)」

 酒井「えー、どうしよーかな」

 めぐ「ちなみに今日はお風呂に入りました」

 尾濱「え、お風呂は、週に何回入れるの?」

 めぐ「週に2回、火曜と金曜かな」

 酒井「じゃあ今日はスッキリですね。次の質問いきます。最近、楽しくなかったことありますか?」

 めぐ「あんまりないかなあ」

 尾濱「楽しく過ごせてるんやね。行きたいところある?」

 めぐ「カラオケ行きたい。作業所も最近行けていないから行きたい」

 酒井「行きたいところいっぱいですね! いま、欲しいものありますか?」

 めぐ「お給料がほしい(笑)。かわいいものを買いに行きたい。イオンに買いに行きたい」

 尾濱「また一緒に行こうね! じゃあ次の質問」

 酒井「好きな人はいますか? 芸能人でもオッケーです!」

 めぐ「恥ずかしい……言いません!(笑)」

 酒井「また聞かせてね。最後の質問! この2年くらい、コロナが流行ってるけど、その前と後で生活で変わったことありますか?」

 めぐ「仕事行けないから寂しい。出かけるのもしたい。お刺身食べたい」

 尾濱「あまり、お散歩でも出れないのかな? 外出?」

 めぐ「出れない。お散歩したい」

 尾濱「出たいね。早く出してー!って感じですね。最後にめぐさんからひとことお願いします!」

 めぐ「元気で楽しいけど早くお散歩に行きたいです!」

 (イラスト:車いすの女性が手を挙げて挨拶しているイラスト)

 めぐさん、ありがとうございました! コロナのために施設は生活に制限が多くあると聞きます。そのなかでも楽しく暮らしていらっしゃることがわかりました。これからは少しずつ面会や外出の制限がなくなり、今まで以上に自分のやりたいことができるように施設や社会が変わっていかないといけません。そのためにも一緒に障害当事者の声を発信していきましょう!

4.2021年度第2回ヘルパー現任研修報告

 こんにちは、ヘルプセンター・スクラムの藤原です。7月30日に2021年度第二回現任研修を行いましたので報告します。

 今回の現任研修のテーマは…『東京五輪、オリンピックだけ? いや、パラリンピック・デフリンピックも忘れちゃ困るぜ!』として開催しました。参加人数は8名のオンライン参加で4名の現地参加がありました。

 (イラスト:車いすテニス選手のイラスト)

 以下の二つを目的とし行いました。

 ・目前に控えた東京五輪をオリンピックだけでなく、パラリンピック・デフリンピックにも注目し、その歴史や競技などを学ぶ。 

 ・スポーツを通じて自分らしく生きることの大切さを考える。

 正直オリンピックは見るけれどパラリンピックはあまり見ないという方が多いと思います。メディアもオリンピックに比べてそこまで放送が多くない現状もあります。そんななか障害者スポーツに自分らしさを発揮し、自分の障害の特性を活かして世界で戦っているパラリンピアンがいます。

 そのことを紹介するために、

 ・障害者スポーツ○×クイズ

 ・障害者スポーツ衝撃映像ベスト2 と題してゲーム形式で楽しく研修を進めました。  障害者スポーツ○×クイズでは、歴史や競技ルールをクイズにしみんなで点数を競いました。  ここで突然ですがみなさんにもクイズを出したいと思います。

 ①パラリンピック最初の競技は水泳である。○か×か?

 ②車いすフェンシングでは、素早い車いすの操作が勝敗の鍵となる。○か×か?

 答えはこの記事の終わりをご覧ください  

(イラスト:車いすラグビー選手のイラスト)

 クイズのあとは動画で障害者スポーツの見どころを紹介しました。参加者は、初めて見る競技もあったようで、パラリンピアンのプレーを興味深げに見てくれました。

 その中でも僕が印象に残ったのは車いすラグビーです。車いすラグビーは激しいぶつかり合いや繊細なポジショニングの駆け引きがあり、手に汗握る攻防が特徴のスポーツであることが伝わったと思います。

 最後に、当事者スタッフの酒井が現役パラリンピアンにインタビューした時の経験を話してくれました。酒井がインタビューをした和田伸也選手は、ロンドン五輪、陸上5000m(T11、視覚障害)銅メダリストです。パラリンピックは競技者の障害の程度によってクラス分けがされており、それぞれの障害ごとにメダルが決まります。普段の練習から伴走者が必要で、伴走者の確保が課題であることや、競技分類の関係で弱視の競技者と全盲の競技者が一緒に走ることのハンデへの考え方などを紹介してくれました。さまざまな課題があるものの、和田さんは走ることが好きで、それが自分らしく生きることに繋がっているんだなと感じました。  

(イラスト:ゴールボールの選手のイラスト)

 今回の研修を通じて、改めて自分らしく生きることの大切さを感じました。自分の限界に挑戦しているアスリートの姿は、障害の有無に関係なく、社会を変えるきっかけになると思いました。みなさんも障害者スポーツをもっと知って、自分らしさを考えていきましょう!(藤原)

 ○×クイズの答え

 ① ×。パラリンピック最初の競技はアーチェリー。元々は傷痍軍人のリハビリの目的で開催されていました。

 ② ×。車いすフェンシングでは、車いすは動かないように固定される。競技者は上半身の力だけで剣を突き出し、一瞬の勝負をする。

5.編集後記

 大学生のインターンを実施して、僕も自分の学生時代を思い出しました。就職活動の筆記試験では配慮がなく、重いプリンターまで持参して解答を印刷、提出するように言われたことがあります。今ではすごく差別的だったなと思い、腹立たしいです。しかし残念ながら、障害当事者は誰でも一度はそうした差別に遭うと思います。

 スクラムでは1月から3月にかけて全8回で若い当事者向けのオンライン・ワークショップを開催します。差別と戦い、社会を変えていくには仲間の存在が必要です。この講座は障害のある私たちのこれまでと未来を仲間と一緒に考える内容です。ご興味がある方はぜひご参加ください。(けんぼー)

スクラムハーフ49号(PDF版)